【精神病者私宅監置の実況】


先日読み終えた本です。

昔、精神疾患をもつ方をケアする施設(や病院等)が
今よりもっと不足していた頃、明治33年(1900年)に制定された
『精神病者監護法』という法律により、
医師による診断書や監置室の図面等必要書類を警察へ提出する等、
一定の条件を満たせば「私宅監置制度」(いわゆる「座敷牢」です)
が認められていた時代がありました。
(その後、1950年『精神衛生法』制定により
『精神病者監護法』も私宅監置制度も廃止されています。もちろん現在も。)

こちらの本は当時精神科医だった呉秀三先生を中心に行われた、
私宅監置とそこに監置されていた方の調査結果であり、
100件を超える私宅監置とそこに監置された方の状況が
監置室の写真や図面と共に詳細に記されています。

家族から深い愛情をもって看護されている事例もあるものの、
崩れかけた廃屋のような監置室、汚物まみれの監置室、
光もささない暗闇の監置室など、
胸が苦しくなるような監置室の事例もたくさんあります。

中には監置してから一度も開けることがなかったのか、
監置室のカギがさび付いていて開けられないものなど、
「この家のそばで火事や洪水などが起ったら、
この中に監置されている方はどうなるのだろう」
と背筋が寒くなるようなものもあります。

満足な医療的ケアさえ受けられず放置されている例は
決して家族の精神疾患や障がいへの無理解だけが原因ではなく、
監置している家族自身にも障がいがあったり、
長年の被看護者に対する看護による
家族の疲労の財政的なな困窮が見受けられる例もあり、
医療制度や施設等が不足している中、
私宅監置制度による家族の負担の大きさを感じました。
(当時は「レスパイト」なんて概念もなかったでしょうから・・・)

衝撃的な内容ですが、福祉関係者の方にはぜひ一度読んでほしい本です。

つい先日も、寝屋川や三田で
私宅監置の再現のような事件があっただけに、
家族だけで抱え込み、
負担を負わないですむ社会を作らないとと改めて感じました。

『現在語訳 精神病者私宅監置の実況』
https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss…

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