障がいのある人の自立生活を考える学習会『凸凹のわたしの暮らしかた~独りじゃない一人暮らしのすすめ~』を開催しました


去る6月5日(日)、以前からこちらでもお知らせしておりました
障がいのある人の自立生活を考える学習会
『凸凹のわたしの暮らしかた~独りじゃない一人暮らしのすすめ~』を開催しました。

これまで当窓口では、過去3回、主に重度の知的に障がいをお持ちの方で
必要な制度をうまく使いながら自分らしく地域生活を楽しんでおられる方の
お話をお聞きする学習会を開催してきましたが、
今回は、精神的なしんどさや生きづらさがある方で
現状から一歩踏み出したいと思いながらなかなか踏み出せないでいる・・・
という当事者の方やご家族を対象とした学習会を企画させていただきました。


コロナ禍で開催を心配していましたが、少し感染が落ち着いてきたということで
満席での開催になりました。
感染防止対策を徹底しながら決行しました。

今回お話をお聞かせくださったのは、奈良市で
精神的な障がいや生きづらさを持つ方のサポートをされている
NPO法人ふぁーちぇの皆さん。


支援者としてお越しくださったスタッフ様方からは
ふぁーちぇさんでの取り組みや就労支援の作業内容、
就職に向けた訓練ほか生活面での幅広い支援内容、
精神的な生きづらさがある方が落ち着いて自分らしく、ありのままに
暮らしていけるよう、当事者の居場所(サロン)活動や
リクリエーション、地域でのお困りごとなどを請け負ってお仕事する
「ふぁーすとすてっぷ活動」についてもお話いただきました。

今回の学習会では、お二人の方にご登壇いただき
ご自身の経験談をお話いただきました。
(お二人には、支援者の方がご本人にこれまでの経緯などを質問し、
それにお答えされるというインタビュー形式でご講演いただきました。)

まずお一人目は、天野長吉さん。



親御様が他界され突然一人暮らしとなってしまった天野さんからは、
学校卒業後、障がいのためになかなか仕事が長続きせず
長きにわたりひきこもり状態であったことや、
支援につながったきっかけ、そこから支援者がどんなふうに増えていき
いまそれぞれの方にどんなサポートをしてもらっているかを
お話していただきました。


一人暮らしになって、先を見通すことが難しいしんどさのため
お金を使いすぎてしまい生活がままならなくなったり、
自宅を売却しないといけなくなったり、
親戚とのトラブルにまきこまれた際など
一人でだったら対応が難しかったことも、
「役所でのいろいろな申請手続きの書類や、
一人暮らしのお部屋を探したり、引っ越しなど
支援者の方に相談することで助けてもらいながら
困ったことも解決できた」というお話をお聞かせくださった天野さん。

ふだんの生活のなかで、お仕事や余暇を楽しまれている様子も
教えてくださいました。

現在どんな支援者さんとつながっていて
どんなことを助けてもらいながら、自分らしく暮らせているか
具体的にお聞きすることで、ご参加くださった皆さんにも
一人暮らしのイメージをしていただきやすかったのではないかと思います。
(仲間とランチしたり、一緒に勉強したり
と余暇を楽しまれている天野さんの写真、
とってもいいお顔で素敵でした(^―^))

 

次にお話くださったのは、井上孝一さん。

井上さんからは、精神的な障がいとなかなか上手に付き合えず
薬を飲み忘れたりして体調を崩し何度も入退院をされたこと、
調子が悪いときに家族やモノにあたってしまったこと、
家族はまだ健在であるものの、家族と別に一人暮らしをすることになった
経緯などをお話くださいました。

たくさんの支援者さんやご家族が日々どの時間に
どのようにかかわってくださっているか
週間スケジュールで教えてくださったり、
一人暮らしのお家の様子も紹介してくださった井上さん。

体調を整えて生活するため薬を飲み忘れない工夫や
一人暮らしで夜間など一人の時間に調子が悪くなったり眠れなくなったときは
どのように対処しているかなど、日々ご自身で自分と自分の体調と
と向き合いながら見つけていった自分時間を楽しむルールを
たくさんお話してくださいした。

被害妄想が少し出たり、モノをなくしてしまった!というときに
ふぁーちぇのメンバーさんやスタッフさんがいつも一緒に
考えたり悩んでくださるため、そういう仲間に恵まれていることが
ありがたいです、とお話されていた井上さん。
(「ありがたい」という言葉をお話の中でたくさん繰り返されていた井上さん。
でもきっと井上さんご自身も
周りの方々の助けとなっておられるのだと思います。)

最初は入院や支援を受けることに少し戸惑いもあったそうですが、
今は時々失敗もありながらも日々
支援者さんと雑談したり、料理や筋トレしたり
毎日を楽しまれている様子が伝わってきました。

お二人のお話のあとは、コロナ禍でもあることから
会場の参加者様から休憩時間中に提出していただいた質問事項に
お二人にお答えしていただくという形で
質疑応答のお時間とさせていただきました。

挙手での質問形式ではなかったので、参加者様から
・具体的な生活費はどんな内訳ですか?
・工賃はどれくらい?
・支援を受けて良かったと思いますか?
・家の売却や家探しはどのようにされたのか?スムーズにいったのか?
・学校卒業後支援になかなかつながれなかったのはどうして?
・現在の親御さんとの関係は?
・今後、就職などはどう考えている?
・(精神的な生きづらさがある)家族が支援を拒んでいる場合どうしたら?
等、かなり具体的で突っ込んだ質問が多かったですが、お二人とも
考えながら、とても丁寧に赤裸々にお話くださいました。

以下、ご参加くださった皆様からいただいたご感想です。
(個人が特定できるものを除く、一部抜粋です)

・どうやって支援者に知り合ったのかなど今に至るまでの経緯が聞けて良かったです。

・実際に一人暮らしを始めてからの苦労や受けている支援を聞けて良かったです。色々な苦労と失敗がありながらも、楽しそうに暮らされている様子がかいま見えて良かったです。雑談ができる支援関係というのは良いなと思いました。

・深く突っ込んだところまで語って下さり勉強になりました。

・本人と親との関係などがわかり、勉強になりました。具体的な日常生活を語っていただき良かったです。

・インタビュー式だったのでとてもわかりやすかったです。

・障がいがあってもいろいろあっても一人暮らしできるんだなと思いました。私もちかいうちに一人暮らしがしたいと思いました。

・当事者にコミュニケーション力があれば(受け入れる力があれば)支えてくれる制度やサポートはあるということがわかり心強く思いました。一つでも繋がっていれば、せっぱつまれば(私が亡くなっても)何とかなると楽観的になれました。

・実際に経験したからこそ出てくるエピソードの数々が聞けてとても参考になりました。食事のこと、お金の事、人間関係を築く力・・・子供のうちからトレーニングをしていく必要があるなと改めて思いました。今講師のお二人が幸せそうであることがとても励みになりました。

・とっても良かったです。ありがとうございました。突然一人暮らしになった場合と、親がいて一人暮らしになった場合の2パターンが聞かせてもらえて良かったです。

・当事者の体験談を聞かせていただきとても参考になりました。

・具体的に話していただき、そのうえで利用している福祉サービスなどの知れてよかったです。色々な公的なまたは制度外の助けを組み合わせることで上手に一人暮らしできるのだと知れました。

・自分自身に共通することがたくさんあったのでとても来て良かったです。とても勉強やためになりました。ありがとうございます。

・自立支援のためにいろいろなサポートがあることがよく分かりました。いろいろなサポートを受けながら自立している姿にたくましさとうらやましさを感じました。生産性ばかりが追及される社会にあって、障がいのある人を支えることを仕事(ボランティア)としている人に改めて感銘しました。

 

約2時間半という長丁場の学習会でしたが、
お話してくださった講師のお二人、NPO法人ふぁーちぇの皆さま、
ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

今回の学習会は、コロナ禍のため定員数をおさえて開催しましたが、
精神的な生きづらさがある当事者の方、ご家族のほか、福祉関係、教育関係の方も
ご参加くださっていました。

なかなか踏み出せないでいる方が一歩でも踏み出すきっかけになれば、
未来を変えるきっかけになれば、と企画した学習会ですので、
学習会で聞いていただいたことを、レジュメを見返しながら
またお家で、職場で、「これからどうする?」「どんな風に暮らしたい?」を
考えるきっかけにしていただければありがたいです。

今回の学習会にあたってはたくさんの方・団体様・
行政関係機関様等に告知のご協力をいただきました。
告知にご協力くださった皆様、
当日会場の一角に設置した情報コーナー(持ち帰りできる資料コーナー)
にチラシ類のご協力をいただいた(いただいている)
たくさんの皆様ありがとうございました。
この場をお借りして御礼申し上げます。


学習会終了後、講師のおふたり、NPO法人ふぁーちぇ様、
当窓口と受付などのお手伝いをもうしでてくださった
スタッフメンバーで記念撮影。
(写真に写っていない方もいらっしゃいます。
皆さまありがとうございました!)

実は今回、当日スタッフとしてお手つだいくださっていた方の中に
精神的な病気(双極性障がい)のため、
受診以外ずっとひきこもっている…という方がいらっしゃいました。
(ずっとメールでのみやり取りさせていただいていて、
今回お手伝いをお願いして、当窓口も初めてお会いできました。)
会場設営から受付、質問票の回収・片付けまでお手伝いくださり
久しぶりのお仕事でくたくたで帰られたそうですが、
「学習会の一人暮らしのお話、自分も参考になった、
また手伝いたい」、とメッセージくださり当窓口も本当にありがたいです。
※自分のような人もいる、ということを知ってもらえたら、
同じような状態の方に何か役にたつことがあればとお申し出いただき
ご本人の承諾をいただき記載させていただいております。T様ありがとうございます。

ご参加くださった方、講師としてお話くださった方や
何度も打ち合わせくださった支援者様方、
そしてあかるいみらい準備室スタッフとしてお手伝いくださった方、皆にとって
色々なことを考える学習会になりましたら嬉しいです。
今後も皆様が、これからのことを考えるきっかけになる学習会ができればと
考えておりますので、楽しみになさっていてくださいね。
ありがとうございました。

 

おまけ
ふぁーちぇさんで製造・販売されている焙煎珈琲。
ドリップパック・粉での販売もされています。
写真はドリップパック5つセットですが、
全てパックの絵柄が違ってとってもかわいいです。
ちょっとした手土産にもいいですね。

NPO法人ふぁーちぇさんHP
http://www3.kcn.ne.jp/~face/

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