『知的・発達障がいがある人にとっての高等教育の意義』を開催しました


昨日、以前からこちらでも告知させていただいていたセミナー
『知的・発達障がいがある人にとっての高等教育の意義』
(主催:奈良女子大学安藤研究室 協力:あかるいみらい準備室)
をハイブリッド(主催者・登壇される講師・パネラーの方々はリアルで
参加者はオンラインで)で開催しました。

平日の昼間開催だったにもかかわらず、
奈良県をはじめ関西地域の他、札幌や関東、九州の方等
全国から70名もの方がご参加くださいました。


第一部は九州を出発点として現在は関東においても
障がいを持つ人のための高等教育を実施している
「ゆたかカレッジ」学長の長谷川正人先生に 講師としてご登壇いただき
前半に、知的障がいのある方の(養護学校(特別支援学校))
卒業後の進路の現状と離職理由、
その中での障がいを持つ人の高等教育の意義や、
ゆたかカレッジのカリキュラムや取り組みについてお話をお聞きしました。
(軽度の方だけでなく、重度の方、発達障害の方も通われているそう。
その方によってカリキュラムを変えておらえるそうです。)


後半は海外の障がいのある方の高等教育の状況ということで
アメリカやヨーロッパ、お隣韓国等、外国諸国で、
知的・発達障がいがある方に大学等で
どのような学びの機会があるのかをお聞きし、
実際に学んでおられる様子やどのような科目を受講されているのか、
一般の大学生とのかかわりやその経験が障がいのある学生だけでなく
一般の学生のその後にどのような影響を与えているのか、
学んでおられる生徒さんたちのリアルな感想等
本当に貴重な資料を動画をまじえて教えていただきました。

休憩を挟んで、第2部は長谷川先生他、
それぞれの立場のパネリストの方々にご登壇いただき
ご自身の取り組みや活動についてご紹介いただきました。

神戸大学・学ぶ楽しみ発見プログラム(KUPI)コーディネーター
河南さんからは2019年から神戸大学で取り組まれている
知的障がいのある方のための学びプログラムについて教えていただきました。

週3回、夕方から夜にかけて開かれる大学での授業に
聴講生である生徒さんが通ってこられ、
そこで様々な学びを受けておられるとのこと。

授業の際には神大の学生さんが
メンターとして参加し、共に学んでおられるそうです。
曜日ごとの科目や授業の様子などもスライドでご紹介くださいました。
(今年も10月から開校されるそうで、
すでに聴講生の方も決定されているそう)

大阪からオンラインで参加くださった福祉型専門学院
ワークスクールのあ様は、代表の森谷様とメンバーの皆様から
進路に福祉型専門学院を選んだ理由や好きな授業のこと、
高等教育(福祉型専門学院)のどんなところが楽しいか、
将来の不安や抱負などをお話してくださいました。

あるメンバーさんの、「在学中の時間で得意を見つけて
苦手なことを練習して成長していけたら」という発言がとても印象的でした。
なにより皆さんとっても楽しく「青春」されていました!

そして今回の学習会の企画にもご協力くださり
知的障がいがある学生の高等教育の機会の必要性について
15年近くも前から考えておられ、
今回のセミナー三人目のパネリストとしてご登壇くださった
奈良県立二階堂養護学校の進路指導担当の吉野先生からは、
生徒たちがが自分の人生を自らの足で歩き、
生きていることを実感し、幸せな生活を送れるようになるようにサポートする
養護学校における進路指導の役割についてや
障がいがあっても、本人の人生は本人が主役であり
幸せの価値観は人それぞれでも、
主体性をもって生きられることこそが最も大切であるというお話を
お聞かせいただきました。

3時間超えという長いセミナーにも関わらず、
皆様とても熱心にきいてくださり、
参加者様からの質問もたくさん寄せていただき
時間内に取り上げられないほどでした。

休憩時間中はこんな感じでリラックスタイム。
皆笑顔でワイワイとお話していましたよ(o^―^o)
⇓⇓

セミナー終了後もご参加いただいた方々から
「ゆたかカレッジの取り組みを紹介してもらってよかった」
「奈良(〇〇)県にも来てほしい」
「親として知的障がいをもつ子が、誰かの指示ではなく、
自分で決めて社会人となっていくことを切に願っています」
「高等部を卒業したらB型事業所と進路が決まっているような現実が嫌」
「(障害があっても)もっと同年代のお友達と遊んだり、
夜遅くまでしゃべったり、大学生活が送れるような社会になって欲しい」
「この子も人生を楽しむことができるんだ、
「あなたがしたいと思ったことが何でもできるよ」と、
本当に言うことができるんだ、と思った」
「発達がゆるやかな障害者の方こそ、
学びの時間が保障されることが必要なのだということが心に響きました」
「高等教育、というテーマを聞いたときに、
うちの子に当てはまる内容かなと思ったのですが、
ゆたかカレッジのお話をお聞きしてまさに求めている学びだと思いました」
などなど本当にたくさんのご感想をいただきました。
(個人が特定できるものを除く一部抜粋です)

参加者の中にはご家族に対象者がいるという方以外に
事業所のスタッフの方、大学の方等もいらっしゃり
「うちでカレッジがしたい」「うちの大学で何かできないか」などの
お声もあり、ありがたい思いでいっぱいです。

当窓口(代表)も平成25年から奈良県の職場実習ジョブサポーターとして
知的障がい・発達障がい・精神障がいの方の
就労の実習支援をすることがあります。

就労を目指す知的障がいの方の支援をさせていただくにあたり、
ご本人とやりとりをする中で(まだまだ心が育っていない、
「卒業時の進路も親が言うから決めた」と言われる方も多く)
「卒業してすぐに就職や事業所へ行くのではなく、
もっと人間性を育てたり
もっとゆっくり自分探しをできたり、
自分の進路を時間をかけて
「自分で」決められる場所が必要なのではないか」
と思うことが度々ありました。

長谷川先生の講演第一部前半最後で流れたゆたかカレッジの取り組みと
生徒さんの様子の動画を拝見して、
「こういう場所がもっと地域にあれば」
と当窓口も思わず涙ぐんでしまいました。

今回学習会の開催にあたり、主催の安藤先生はじめ
協力していたメンバーは皆
「知的障がいがある方全てに高等教育が必要だ」
と言いたかったわけではありません。

もちろん仕事に対して夢や熱意、明確なビジョンがあり、
「早く仕事がしたい、自分は勉強より早くスキルを磨きたい」という
方もたくさんいらっしゃると思いますしそういう方は
卒業後すぐに就職という道がいいのだと思います。
ただ、まだ仕事や将来やりたいことがはっきりしていないにのかかわらず
まだまだ心も未発達で色々な体験もしないままにもかかわらず
就職か事業所かに進路が決まってしまっていることが多い現状に
もっとたくさんの進路の選択肢がある社会になれば
(障害があってもたくさんの選択肢があってあたりまえという社会にしたい)
という想いで開催させていただいていました。

「友達との中で心も体ももっと成長して、自分という存在を知って
自分の未来を自分で選んでいく、そんなスキルをゆっくりでも身につけてほしい」
「障がいがあっても友達と、学んだり、夜更かししたり、
遊びに出かけたり、青春したりする時間があってもいいじゃない?」

 

今回の学習会が皆さんにとって
子どもや関わりのある方の未来の選択肢について考え、
自分にできることは何かを考えるきっかけになりましたら幸いです。

ゆたかカレッジの取り組みを教えてくださった講師の長谷川先生、
パネリストとして貴重なお話をしてくださった河南先生、
のあの皆様、吉野先生、そして長時間学習会にご参加くださった皆様
本当にありがとうございました。
(安藤先生、研究室の皆様お疲れさまでした!)


奈良で、新しい学びの場会議。
何年後かに「この日が最初の一歩だったね」
といってたりするのでしょうか?